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昼休み。
逃げるように編集部から飛び出してきた、俺はそのまま近くのカフェに飛び込んだ。
路地裏にひっそりと開店しているカフェはすこし料金は高いけれど、一部屋一部屋個室仕様になっていて、リラックスして仕事に打ち込める空間だった。
店員にコーヒーを頼んで、鞄からネームを取り出しチェックを入れていく。
「うわ…絶対俺、変だと思われた…」
全部この服のせいだ!なんて思ってしまうのはあまりに子供っぽい。
「雪名がこんなの着せるから……」
ぎゅっと自分で自分を抱きしめると、ふわりと服から雪名の香りがした。
「…………」
薄い生地が肌に吸い付くようで、妙に生々しい感触が残る。
まるで、雪名に触られてるみたいだ。
『ほんっと、綺麗な肌』
今朝、雪名はそういって笑ったんだったっけ。
「綺麗だなんて、何言ってんだか…」
物はためしと右手を左腕に滑らせる。
するり、と布ごしに肌のぬくもりが感じられた。
雪名はいつもどうやって触っていただろうか。
一度意識してしまうともうダメだった。
ペンを動かすだけで、身体中で肌と布が擦れる感覚がする。
「こ、れじゃ、仕事に、なんねー…」
全身を撫で回されているような感覚に下腹部に熱が集まる。
ペンとネームを鞄にしまい直して、トイレにでも行くかと思案したタイミングで店員がコーヒーを持ってきた。
「おまたせしました。コーヒーと・・・、お連れ様です」
言われて顔を上げると、
「やっぱり木佐さんだった!」
大学帰りらしき雪名が部屋に入ってきた。
「え・・・?」
「たまたま立ち寄ったんですけど、名簿に名前があったんで。年齢あってたし、珍しい名前だからもしかしたら・・・って。そしたら、ドンピシャでした」
コーヒー俺もください、と店員に告げると、さっさと荷物を置いて隣に座る。
「大学は?」
「午前で講義はおしまいです。それより、木佐さんは仕事どーしたんですか?」
「なんか集中できなくて、ここでやってた」
「ふーん」
雪名は部屋を見回して、無造作に書類が突っ込んである俺の鞄を見た。
「もしかして、集中できないのは俺のせいですか?」
「・・・そんなことない」
図星を指されて内心は動揺していたが、それを見破られないように目を伏せる。
「あれ、そうなんですか?せっかく俺のこと思い出してくれるかなって期待してたのに」
すこし不満そうに口を尖らせた雪名が俺を抱きしめようと手を伸ばす。
あと少しで触れるか触れないか、といったところで、バレるんじゃないかと怯えてびくっと身体が震えてしまった。
もちろん、雪名はそれを見逃さなかった。
「俺にぎゅってされるの、イヤですか?」
伸ばした手を床に下ろして雪名が俺を覗き込んできた。
「ちがっ・・・」
「なんか顔、赤くないですか?」
「赤くないって!」
怒ったように見上げると、雪名はスキあり!と掠めるようなキスをした。
「コーヒー来るまで待っててください。それ、辛いでしょ?」
「雪名、お前、わかってて・・・」
「顔は赤いし、目はとろんとしてるし、息は熱いし・・・木佐さん、その顔は絶対誘ってますって」
雪名の言葉でさらに顔が熱くなったのはいうまでもなかった。
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