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※水茎-1- と話が繋がっています。先にそちらをお読みください。
弘樹がレポートを受け取る前日。
「ウサギさんのばーーか!」
宇佐見と表札の下がる高級マンションの一角では、遅い時間にも関わらず広いベッドルームに怒号が響き渡っていた。
「おい美咲……、いくら防音とはいってもそう大声は出すものじゃない」
キーンと響く耳に手をあてながら秋彦は、怒るでもなく興味なさげに返す。
「でもさ!でもさでもさ!ウサギさん!いくらなんでもこれはひどいんじゃないでしょうか?」
素っ裸にシーツをぐるぐる巻いた古代ローマ人のような格好のまま、ノートパソコンを抱えて美咲は半べそ状態だ。
見ればノートパソコンのワープロソフトの原稿は、名前と学籍番号を残したままのほぼ白紙の状態である。
「明日までのレポートがあるから今日は絶対にしないっていったのに!……俺、明日殺される」
真っ青な顔をしてローマ人……、もとい美咲はがっくりとうなだれた。
「殺される、なんて大げさすぎるだろ」
たかがレポートで……と、秋彦はベッドサイドの煙草に手を伸ばした。
「殺されるの!だって、相手は<鬼の上條>なんだからさ!」
中途半端なものを出すくらいなら、最初から出すんじゃねーと、チョークの数本でも飛んできそうである。
ただでさえ授業でも怒られているというのに、レポートも受け取ってもらえなければ間違いなく単位は落とすだろう。
「あいつの授業か……」
紫煙を吐き出しながら、物思いに耽るように秋彦は呟いた。
「え?」
内容までは聞き取れなかったらしい美咲は、聞き返す。
それには答えず、秋彦は美咲からパソコンを取り上げるとカタカタと慣れた様子でキーを叩きはじめた。
「俺が書いてやるよ。その<鬼の上條>とやらのレポート」
「で、でも、俺の課題だし……。ウサギさんだって疲れてるし……」
「俺は今日ようやく仕事上がったし。それに、お前は2徹目だろ?」
だから、寝ていなさいと優しい声と大きな手で視界を覆われてしまえば、素直な体は自然と睡魔に襲われる。
美咲は大抵のことには興味を示さない秋彦の珍しい態度にいささか困惑しながらも、連日の徹夜と先ほどの運動が響いたのかあっさり眠りの世界へと落ちていった
「さて……お手並み拝見、といこうか。弘樹?」
不適な笑いを浮かべた秋彦は、美咲のレポートを仕上げにかかったのであった。
<11/07/26>
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