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ピロートークというものを実は俺はあまりしたことがなかった。

いつもヤることヤったらさっさと寝ていたし、余計なことを話してぐだぐだと関係を引き伸ばすのも好きではなかったから。

だから、雪名とこうしてベッドに転がりながら話をすることは不思議なことだった。

いつも他愛も無い話ばかり。

最近のCMがどうとか、仕事の進行がどうとか、本が売れてる売れてないとか、そんな感じで。


ちなみに今日の議題はこれ。


「木佐さん、もし俺がこの顔に生まれていなかったらどうしますか?」

「んー・・・、たぶん一生出会わなかったかな」

「えー、ひどい!それでも俺はお前を探すよ、とかなんとかかっこよくてクサイセリフが聞きたいですって」

「でも、現実ってそんなもんだって。雪名の顔が雪名じゃなかったら、それはもう雪名じゃないよ。雪名って人間は、身体と中身合わせて出来上がっているんだからさ」

「それはそうですけど・・・」

「そうそう」


俺はめんどうなことはキライだから。

雪名がいなければまた他の人を探してしまうかもしれない。

雪名の顔をしていたら中身が雪名じゃなくても好きになっていたかもしれない。


「じゃあ、俺の顔が何かの事故で醜くなったりとかしたらどうするんですか?」

「あー、それは考えたこと無かった」

「考えてください」

「うーん・・・どーだろ。状態による、かな・・?」


やっぱり、ゾンビみたいになってたり、ぐしゃぐしゃになっていたら生理的にイヤだ。

そういうと雪名は枕に顔を押し付けて泣いたフリをした。


「木佐さんサイテー」

「ごめんごめん」

「どーせ悪いって思って無いんだから」

おしおきですよ!と、雪名は俺の頬をぎゅうっとつまんだ。

「痛いって、雪名」

「ごめんなさい」

雪名は軽く謝って、すこし赤くなった俺の頬にキスを落とした。

「・・・・・・・」

頬にあたたかい熱を感じると、急に眠気が襲ってきた。

昨日まで徹夜続きだったことを思い出しかけたところで、雪名が俺を抱きしめなおした。

「眠いですか?」

「うー・・・」

優しい声に言葉を返す気力も無かった。


「俺、いいこと思いつきましたよ。木佐さん」

「・・・ん・・・?」


「俺を捨てる時は、俺の顔を潰してください」


大好きなあなたが俺の事を忘れないように顔をあげますから。

雪名は、そっと俺の手をとってすべすべしている俺の大好きな形の良い顔にあてた。


「これならねむそうな木佐さんでも覚えてられるかな」

「ゆきな・・・」

覚えていられるどころの騒ぎではなく、驚きすぎて完全に目が覚めていた。

目を見開いて驚いていると、雪名が起き上がって馬乗りになってきた。


頬に当てていた手を手のひらから手首に下ろすと、ベッドに押し付けるようにぎゅっと強く掴む。

動かそうとした手は俺のもののはずなのに不思議とぴくりとも動かなかった。


「顔、潰れたら痛いのかな?」

きっと痛いんだろうなあと、雪名はあいている手で頬を軽くつねりながら言った。



「でも、俺があなたを捨てる時には・・・」




木佐さん、どうなっちゃうんでしょうねぇ。


他人事のようにそういうと雪名はくすりと笑って続けた。


「俺にとっては、あなたのどこも愛しいから」




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