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※木佐さんの過去を勝手に妄想してます。
雪名と事に及ぶ時を一言に言い表すのならば、俺は新雪だろうなあと思う。
きっと、「雪」だからそんな風に思いついただけだけど、勢いとしては間違っちゃいないはず。
とにかく男同士のこういうことに関しては、まったくのシロウトなのだ。
「大丈夫ですか?」
「ん」
だから、こんな風にちょっといれるだけなのにだいじょーぶですか?とか痛くないですかとか連発するし、俺はその度に赤面しなきゃいけない。
俺は言いたくは無いがクロウトで・・・、仕事とプライベートを切り替えるみたいにヤるぞ!といったん決めたら思考はシャットダウンしている。
なんでかっていうと、余計なことを考え始めたらどうしようもないから。
ところが最近、雪名とつきあいはじめてからはこんな感じでとりとめもないことばかりが頭を埋めている。
「木佐さん、こんなところに傷あったんですね」
あちこちぺたぺた触っていた雪名が、言葉と一緒に向こう脛についた細い傷にそっと触れた。
「脛の傷って、何かミステリアスですよね」
昔からよくカタギになれない人とかが持っていたりしますけど。
木佐さんは傷も愛しいですよ、と雪名が跡に沿って指を這わせた。
甘い言葉にくらりと眩暈がするが、あいにくそこまでご立派な物ではない。
「・・・俺の恥。あんまりかっこいい経緯でついたわけじゃないから」
これは、俺の原点、とも言えるべき傷だ。
雪名そっちのけで脳内が思い出モードに入る。
「俺が、はじめて男と寝た時につけられた」
「え・・・・?」
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はじめてこういうことをした・・いや、された時は、何がどうしてとかそういうことを考える間も無くて、ただ体をまさぐる手に怯えていた。
『いいから静かにしてろよ。お前みたいなのでも泣く時はかわいく見えるもんだな』
あの言葉は誰に言われたんだろう。
なんで俺は泣いていたんだろう。
記憶にがっちりカギをかけてしまったようでもうおぼろげにしか思い出せない。
ただ、暴れたときにひっかかれた脛とケツから真っ赤な血がだばだば出てて、殴られたり蹴られたりして全身が痛かったよなーという程度。
あと、あー、これがウワサのゴーカンって奴ですかと思いながら、破れたシャツを引っ掛けて帰ったんだった。
こう見えて俺は昔から自分に淡白な人間だったようだ。
それからしばらくはガード固めてたけど、やっぱり捕まって、そのうちにもうこれ気持ちいいって思うことにしようって切り替えて、それから男とヤるのが癖みたいになって、顔だけで行きずり男と寝て・・・。
んで、今に至る。
・・・・って、今に至っちゃったけど・・・、大事なこと忘れてねーか。
俺、恋なんてしたことも無かったんだ・・。
こんなろくでもない経歴なんてとてもじゃないが口には出来ない。
「それって、合意・・ですか?」
急に黙った俺に何かを悟ったのか、雪名が尋ねる。
「そりゃ、もちろん・・・・合意、じゃないけど・・・」
「ひどい・・・」
「でも、こういう奴もいるんだって頭の隅においとけばいいから」
社会勉強にちょうどいいっしょ、と茶化すと、
「木佐さんは自分を大切にしなさすぎます!」
雪名は今にも泣きそうな顔で叫んだ。
「え?」
「痛かったら痛いって言ってください。イヤだったらやめろって・・・」
そこまで言うと耐え切れないって感じで雪名は、ぐしぐしと目と鼻を擦った。
「なんでお前が泣くんだよ・・・」
雪名が悪いわけじゃないし、雪名に問題があるわけでもない。
それなのに、雪名は懺悔でもするかのように俺の手を握って、こう告げた。
「・・・昔の木佐さんを守れなかったのは、それまでに知り合えなかった俺のせいですから」
これからの木佐さんを大切にさせてください、と消え入りそうな声で懇願されれば、受け入れないわけにはいかない。
「・・・・・・・・うん」
今はまだ、何も言えずに頷くことしかできなくてごめん。
どうやら俺は、恋をしているらしい。
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