[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ヒロさんという人は俺から見ればもうそれはそれはかわいい人です。
俺が惚れたのは泣き顔でしたが、それに限らず挙動から何から何まで俺を惹きつけます。
ですが、奥ゆかしいので人前では絶対に甘い言葉をかけてくれることはありません。ただの一言さえも。
だから俺は、恥ずかしがり屋の彼が言わない分だけ思いついたあらゆる言葉を言いたくなってしまいます。
ヒロさんは聞く度にぶすっとした顔で文句を言いますが、どれもこれも本当の気持ちとは反対だってことさえ頭に入っていれば愛の囁きに変換できます。
ところで、ヒロさんは文学がお仕事ですが、部屋の蔵書を見ているとたまに恋愛ベースで書かれたものがある時があります。
あんなに恋愛下手・・・というと怒られそうですが、そんなヒロさんなのに恋愛の研究をしているって不思議ですね。
そういえばヒロさんがよく注文している宇佐見さんの小説も恋愛のお話の時がありましたっけ。
表紙が派手はピンク色で、一気に何十冊も注文するので、本当に大好きなんだなあと思っていますが、俺には一向に読ませてくれないので悲しいです。
タイトルは、純なんとか・・・?忘れてしまいました。
あ、それからヒロさんは天然です。
理性的な人ですが、基本的には直感に頼っているので不意に俺も予測できないことをしてくれます。
俺はあまり感情の起伏が激しくないので、そういう風にめまぐるしく変わるヒロさんに喜怒哀楽を身をもって教えてもらっているような気すらしています。
そうそういい忘れましたが、俺は今ヒロさんを驚かせようと玄関の前にいます。
ヒロさんはしばらく研究のために大学にこもっていたのですが、本日ようやく帰るとのメールが来ました。
俺の方は、大学病院の方も新しく研修生が増えたので、手が空いてお休みをもらいました。
医者になってからは、丸一日休みなんて久しぶりだったので、掃除したり、洗濯したり、家事をしていたら一日過ぎていました。
ヒロさんの好物のお夕飯も用意が終わり、風呂も湯気をたててほかほかしてます。
あとはヒロさんだけ。
「あ!」
コツコツという靴の音と、ずるずる重そうな何かを引きずるような音が廊下を歩いて近づいてきました。
今日も帰りに古本屋さんで何か文献を買い込んできたんでしょう。
あまり言いたく無いですが、もうこれ以上買ったら床が抜けてしまいそうです。
「ただいま・・・」
カギが回ってドアが開きました。
暗くてよく見えませんが、声からヒロさんはとても疲れているようです。
お仕事とはいえ無理はして欲しくないですが、そんなヒロさんを癒すために俺は夕食やら風呂を支度しておいたわけですし、今こそあのセリフを言ってみたいと思います。
「お帰りなさい、ヒロさん!ご飯にしますか?お風呂にしますか?」
「教授」
べしゃっと玄関に放り出されたのは、本ではなくて酔ってべろべろになった宮城教授でした。
「悪い野分、風呂沸かしておいてくれたなら教授先に入れてもいいかな?昼から飲みに付き合わされて俺も結構ふらふらでさ・・・」
「え、と・・・はい・・・」
「いてーよ、かみじょー」
マイスイートハニー!と叫んでヒロさんにへばりつく宮城教授をひっぱって、ヒロさんは風のようにお風呂場の方へ行ってしまいました。
ほらね、ヒロさんって読めない男なんですよ。
| ≪ はい | | HOME | | おお! ≫ |