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弘樹がちちち・・という鳥の鳴き声で目が覚めると、もう野分は起きていて弘樹の顔を見ていました。
すぐ目の前に野分がいて弘樹は内心もうとにかく心臓が口から飛びだすくらいに驚いていたのですが、驚きすぎて何も言えなかったので野分にはびっくりしたかなーくらいにしか取られませんでした。
「ヒロさん、おはようございます。寝顔もかわいいですね」
「・・・おはよう。俺は起き抜けから頭が痛いよ」
「頭痛ですか?あ、またそうやってシワが・・・」
野分は手を弘樹の眉間に伸ばすと優しく擦りました。
「やめろ!」
でも弘樹はまだ野分と野分流のスキンシップに慣れていなかったので猫のようにぱしっと手を叩き落とすと、さっさとベッドから出て行ってしまいました。
「あ、ヒロさん・・・」
手を伸ばしたまま悲しい声で名前を呼ぶ野分に、弘樹もすこし可哀想になって朝ごはんでも作ってやろうかという気持ちになりました。
「お前、腹減ってないのか?冷蔵庫とかは・・・」
「ないです。お金も無いですから・・」
はは、と乾いた笑いをする野分に唖然としてしまいました。
ご飯が食べられないくらい困窮しているなんて、弘樹には考えることもできない世界でした。
「ちょ、ちょっとだけ、待ってろ。いいか、動くなよ!」
弘樹はポケットにあったわずかばかりのお金を使ってバケットを買ってくると、野分を起こして食べさせてあげました。
「本当にありがとうございます・・・ヒロさんは優しいですね・・・」
野分は礼を何度も言ってからそれを食べました。
「じゃ、お前何日食って無いんだよ・・・」
「三日・・かな?もっとだったかな・・・。でも一食抜いて誰かが助かるなら俺の事はどうなってもいいんです」
医師は民の為にあることを信じて疑わない野分はいとも簡単にそんなことを言いました。
けれど、野分の身体は傍で見ているだけでも衰弱していることがわかりました。
「お前、そんなんじゃいつか死ぬぞ」
弘樹はこれ以上話していても時間の無駄だと判断して椅子から立ち上がりかけましたが、
「待ってください!」
ベッドから伸びてきた野分の手によって再び座りなおさせられました。
「な・・・、なんだよ?」
掴まれた手が温かくて、力強くて、穏やかだと思っていた野分の意外なギャップに弘樹の心がどきりと動きます。
離せと言うことも、振り払おうと身体を捻ることも忘れて野分の顔をつい見つめてしまいます。
「昨日言った頼み事をしてもいいですか?ほんのひとつだけです」
「金をよこせとか無理な話じゃなければいいけど・・」
怪訝な顔の弘樹に野分は違いますよ、と笑ってから言いました。
「その窓から困っている人がいないか探して欲しいんです。見つけたらそれを俺に教えてください」
「おまえ・・・・」
弘樹の瞳が揺れました。
野分の頼みはお金の無心よりもずっと弘樹の心を動揺させたのです。
なにせその願いを叶えたら野分は餓死してしまうかもしれないのですから。
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