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だいたい最下位


最近、ヒロさんに睨まれているような気がする。

一緒にご飯を食べていても、テレビを見ていても、愛を確かめ合っている時でさえ、たまにギロっと音でもしそうなほど睨まれることがあった。

恥ずかしい時や、照れている時もじとっとした目をするんだけど、それにはきつい視線の中にちょっとだけの嬉しさが配合されているからすぐわかる。

気づかないうちに何か機嫌を損ねてしまったのだろうか・・?

テレビやご飯なら気に入らないものはすぐに言うし、だとしたら考えたくは無いが夜の時間に何か問題が・・・。


「草間先生、回診お願いしまーす」

「わかりました」


・・・それもまた何かあったら言うだろう。

勤務時間中にこんな邪な事を考えていては、子供達に悪影響でも与えそうだと思い直して、あとで先輩にでも相談してみることにした。



「というわけで、いろいろ借りてきました!」

じゃーんと先輩から借りたそーいう系のものを並べてみると、ヒロさんはこの世の終わりでも見たかのように絶句した。

「一つ聞くけど、・・・どうしてこうなった?」

「先輩に聞いたら、なんか夜がうまくいかない時はコレに頼れって貸してくれたんですよ」

「激しく話が見えないんだけど」

どこでこんなもん見つけて来るんだ・・?とヒロさんはそのうちのひとつを取り上げると睨むように眺めた。


また睨んでる。

やはり、これでも不満なのかな・・。


「ヒロさん、やっぱり不満ですか?」

「は?何に対してだよ」

「睨んでいるからイライラしているのかなって・・」


俺がしょんぼりと言うと、ヒロさんは「俺が何を睨んでいるって?」と不思議そうに尋ねた。


「最近、俺のこと見る時・・・とかです。なんか、睨んでませんか・・?悪いところとかあったなら申し訳なくて」


改善する気はあるんです。でも内容がわからなくてはどうにも・・・、と声もテンションも尻すぼみになっていく。

「・・・・・ああ!」

すると、ヒロさんはようやく合点がいったというように声をあげた。


「俺、どうも視力が落ちてきたみたいなんだ。今までは騙し騙しなんとかしてたけど」

「視力、ですか?」

「そう。仕事柄文献もわんさと読むし、そろそろ何か買おうかと思ってたとこ」

「なんだ・・・そうだったんですか」


わかってみればなんとも単純なことだった。

あれほど悩んで全く検討違いのところを目指して突っ走っていたことに今更ながら少し恥ずかしくなる。

「それじゃ、眼鏡を買いに行くんですね」

これを口実にデートにしてしまおうと、俺の頭の中ですぐさま駅の近くの眼鏡専門店から夕飯までのルートがはじき出された。

「次の週末にどうですか?」

久しぶりにヒロさんとデートできる喜びが頭の中を駆け巡る。


それなのに、

「うーん、・・・やっぱ眼鏡はやめる」

当のヒロさんはどこか乗り気じゃなかった。


「え、どうしてです?」

「野分と会うよりも前に、その・・知り合いの人にさ、言われたんだよ。『上條君には似合わない』って。ちょうどいい具合にへこんでた時期だったからさ。正直、かなりキツかった」


だから、眼鏡にはあんまりいい思い出が無い。

それだけ言ってヒロさんは疲れたから寝る、と寝室に引っ込んでしまった。


昔の話に触れると、ヒロさんは少しだけブルーになる。

そういう時は何も聞かずに傍にいるだけで彼にとって薬になっているとようやくわかってきたけど。

ひょんなことで思い出させてしまうたび、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。

俺はあなたを癒してあげたいだけなのに。


「今日は、空回ってばかりだな。俺・・・」

自嘲気味な呟きをひとつだけもらしてから、電気ポットで二人分のコーヒーを作り、寝室へと足を向けた。





<11/08/23>

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