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いつからだろうか。
急に弘樹がよそよそしくなったのは。
いつからだろうか。
本以外になにもなかった部屋がさらに生活感を無くしたのは。
「……お前の布団、くさい」
「は?!昨日干したばっかだぞ?」
いつものように締め切りから逃げてきた秋彦は、弘樹の家のドアを叩いた。
疲労で限界の体をおしてなんとかベッドにくるまったまではよかったがすぐに家主に布団をぽいと投げた。
ご丁寧に枕までつけて。
「なんか、違うにおいがする」
「いや、そりゃ、干したから……」
くんくんとにおいをかぎながら首を傾げる秋彦に対して、弘樹はしどろもどろに言葉を濁した。
「……弘樹。お前、まだあんな馬鹿な真似をしてるのか?」
なにかを察したように、ぐいと顔を近づけて秋彦が弘樹の目を見つめる。
「…………」
「…………」
今にも降りそうな雨雲の如く重い沈黙が二人の間を覆い始める。
先に耐えられなくなったのは弘樹だった。
「……は、離せっ」
追求する秋彦の手から逃れようともがく。
「いやだ」
それを有無も言わせず押さえ込む秋彦。
「もういいだろ!俺のことなんかほっとけよ!」
「そうはいかないだろう。俺が放っておくとお前はすぐにそうやって自分のこと傷つける」
「べっ、別に、傷つけてなんかねーよ!」
「そんな目をしてる奴が……」
労わるようにそっと伸ばされた秋彦の手を、弘樹はぱしんと叩きおとした。
「これ以上俺に触るな!干渉するなよ!……頼む、から」
泣きそうになっている事を悟られないように弘樹はさっと立ち上がると、来客用の布団を取り出し秋彦に投げて自分は玄関へと向かった。
「それ、つかえ」
「……弘樹は?」
急に靴を履き始めた弘樹に布団を持ったまま秋彦は不思議そうに尋ねた。
「ちょっと買いだし」
かろうじて言葉を発すると、弘樹は逃げるように玄関の扉を閉めた。
<11/07/24>
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