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ヘビーシッター -3-

ヘビーシッター-2-と話が繋がっています。先にそちらをお読みください。




「今日はお疲れ様」

あれだけかんかん照りだった太陽もすっかり鳴りを潜めて、星空には青白く光る月が照らしている。

帰りたくないとぐずっていた真浩も帰りの車の中で小さくなって眠ってしまった。

「本当は静かに回りたかったんだが」

「しょうがないよ。真浩が来るといつも大戦争だもん。兄チャンの息子なのに誰に似たんだろね・・・」

「間違いなくお前だろ」

「え、俺?」

あそこまで元気だったかなあと思い返していると、それが伝わったのかウサギさんはゆるやかにハンドルを切りながら笑った。

「次に何をするか予想できないところとかな」

「え?」

「ジェットコースターに誰と乗るかで悩んだ時なんて傑作だった」

「う・・・アレは忘れてください」

恥ずかしかった出来事はどうにも簡単に忘れることが出来ない。

せっかく忘れかけていたのにウサギさんの言葉で頭の中では勝手に出来事を再現VTRしてしまっている。

それというのは、ジェットコースターに乗りたいとごねた真浩を連れて乗り場まで行くと、コースターは二人乗りだったというところから始まり、あとはどっちが俺と乗るかでもめ始める真浩とウサギさん。

結局、いつまでたってもラチがあかないので苦肉の策として、ウサギさんと真浩を問答無用で二人乗りコースターに押し込むと、俺はさっさと後ろの座席に腰を下ろしたのだ。

「アレほど驚いた顔をした真浩は始めてみたぞ」

「俺だっていつもペースに巻き込まれてるわけにもいかないでしょ。それに、ウサギさんだってびっくりしてたじゃん」

「まさか従業員そっちのけで席に着かせて安全バー下ろして動作確認までしてしまう美咲には恐れ入ったよ」

「だってアレ位しないとまた立ち上がってもめそうだったんだからしょうがないじゃん」

くすくす笑いをやめないウサギさんに言われるとちょっと拗ねてしまう。

「どーせバカにしてんだろ。笑うなよ!」

「してないよ。俺はお前が真浩を選ばなかったことが嬉しいんだ」

すると、そんな感情の動きを敏感に察したようにウサギさんは真面目くさってこんなことを言うからタチが悪い。

「・・・さいですか」

相手は小学生とはいえなんとも嫉妬深い男だ。

はあ・・とため息をついたら後ろの席で真浩が動いた気配がした。


「うー・・みさき?」

「あ、真浩起こしちゃった?ごめんね」

「ううん。あのね、とってもたのしかった。またいっしょにいこう」

めいっぱい遊びつくした真浩はエネルギーをフル消費してしまったらしく、話す声もどこか眠そうだ。

それでも楽しかったのか、買ってあげたぬいぐるみを抱きしめている。

「いいよ。休みの日だったらいつでもいいよ」

「うん!ありがと。みさき、・・・だいすき」

うつらうつらした言葉をなんとかしぼり出すと、真浩はそのままくうくうと寝息をたてた。


車は高速道路を静かに走る。

車内では小さな寝息と嫌な気配。


「ウ、ウサギさん、や、やっぱり子供ってかわいい、よね?」

隣でハンドルを握る相手を恐る恐る伺いながら、話しかけると、

「ほほう、お前は告白されたというのにずいぶんな余裕だな」


あとで覚悟しろよ、と不適な笑いを浮かべたドライバーはさっさと真浩を家に送還するべくスピードをあげた。





<11/08/13>

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