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※ヘビーシッター-1-と話が繋がっています。先にそちらをお読みください。
起き抜けの頭が働いていない間に仕度をして、朝ごはんに簡単なものを詰め込むとすぐさま出発。
そういえば兄チャンが俺に今日一日だけ子守を頼むとか言われてたっけと思い出す頃には目の前に遊園地が迫っていた。
「美咲、喉かわいた」
「みさきージュース飲みたい」
「はいはいはい」
「美咲、頭にクマの耳をつけたい」
「クマのつけたいー」
「はいはいはい」
平日の遊園地は流石に休日の殺人的な混み方よりはいくらか平和なものだった。
それでも手のかかる子供、(一部大人)を抱えるため俺にとっては平和でもなんでもなかったけど。
ウサギさんあるいは真浩一人だけならまだいいのに、最悪なのは二人が揃ってしまっているということなのだ。
「美咲、お化け屋敷に入りたい」
「みさきージェットコースター」
とにかく二人はお互いに反発している。
意見が合う時はいくらかマシだが、こんな風に分かれてしまったら最後、どっちの意見を採用するんだ!と言わんばかりの視線が突き刺さる。
「じゃ、混むから先にジェットコースター乗ろうか?」
「近年の猛暑の影響でおそらくクーラーのきいているお化け屋敷のほうが混むぞ」
「え?そうなんだ。なら、お化け屋敷にしようか?」
「やだー、ジェットコースターのるのー!」
勘弁してください。
兄チャンがいる時はどちらも素直になんでも乗るのにどうしてこうなってしまうのだろう。
最近ものごころついてきた真浩は、よく小学校の帰りに遊びに来る。
何も面白いものがあるわけでもないが、でも「みさきにあいにきた!」とか言われると叔父さんとしては冥利に尽きる。
そんな日はほぼ毎回ウサギさんの機嫌ががすこぶる悪くなるから手放しで喜べないけれど、真浩の小学校の話を聞いている時はつかの間仕事のことも何もかも忘れられるから嬉しい。
遊園地は子供の王国、なんて言われるし、かわいい真浩に頼まれると何も言えなくなるような甥バカとしてはやっぱりここはウサギさんに折れてもらうしかないかな。
「ウサギさん、悪いけど真浩を優先してもいいかな・・?」
「・・・・・・・しかたない」
申し訳無さそうに言うと、ぶすっとした表情でウサギさんがしぶしぶ頷いた。
「じゃ、ジェットコースターが先ね」
「わーい!」
にこにこと真浩が喜んで、すぐさま列のほうへ走っていく。
炎天下だったこともあってか、列は短くスムーズに乗り物の搭乗口までたどり着けた。
「結構早く乗れそうだね」
「そうだな」
「たのしみー」
と、そこまではよかったが、
「――では、二名様ずつ搭乗ください」
係員の指示にコースターを見ると、二名ずつの席になっていた。
「美咲、俺の隣」
「みさき、いっしょにのろ!」
「・・・・・・・・」
またこのパターン・・・。
よりによって二名用って、きっと何かの嫌がらせだろうかと憂鬱になるが、ここでもたもたしていたら後続の人達に迷惑がかかる。
「それじゃ、真浩、一緒に・・・」
真浩に手を伸ばそうとするとウサギさんは何も言わないでじっと俺の方を見ている。
確かに真浩と一緒とはいえ、せっかくの休みに遊園地デートなんだから・・・と言いたいんだろう。
ここ連日の仕事が激務過ぎて久しぶりの休日なのは確かだ。
社会人になってからは忙しくて、めったに休みなんて取れないのにそれでもお互い恋人としているならやっぱりそっちを優先すべきなのかも・・・。
その視線に耐えられなくなって、伸ばしかけた手がひっこんでしまう。
ヤバイ、選べない。
「すみません、後がつかえていますのでお早めに搭乗ください」
困った顔の係員が遠慮がちに促してくる。
もう時間がない。
「美咲」
「みさき」
ぐるぐる混乱する俺に追い討ちをかけるように二人が俺を呼んだ。
手を差し出す二人は、俺とあいつとどっちがいいの!と言わんばかりだ。
なんで遊園地まで来てこうなる・・・。
途方に暮れたいが、そんなことをしていても話は始まらない。
後がつかえている。
うまく解決することはもう諦めて、俺はずんずんと二人のほうへ歩いていくと、伸ばされた手をぎゅっと握った。
続き
<11/08/13>
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